
動物病院で行うリハビリとは
「リハビリ」と聞くと、人がケガや病気のあとに通うものというイメージを持つ方が多いかもしれません。ですが、近年は犬や猫などのペットに対しても専門的なリハビリを行う動物病院が増えています。リハビリは、手術後の回復を助けたり、高齢ペットの足腰の衰えをゆるやかにしたりと、ペットの生活の質を保つために大きな役割を果たします。
ペットのリハビリが必要になる主なケース
ペットのリハビリがすすめられる場面としては、次のようなケースが代表的です。
・骨折や靭帯断裂などの整形外科手術のあと
・椎間板ヘルニアなど、神経系のトラブルで歩き方が変わったとき
・高齢になり、立ち上がりにくい・段差を嫌がるなど足腰が弱ってきたとき
・肥満や運動不足で、関節や筋肉に負担がかかっているとき
・スポーツドッグやアジリティ競技など、運動量が多い犬のケア
このような場合、ただ安静にしているだけでは筋力や関節の動きが落ちてしまい、回復に時間がかかったり、元のように動けなくなったりすることがあります。そこで、獣医師の指導のもと、計画的に身体を動かしていくリハビリが重要になります。
人のリハビリとの共通点と違い
動物病院のリハビリは、人のリハビリと共通する部分が多くあります。関節の動きを保つ運動や筋力トレーニング、ストレッチなど、基本的な考え方は似ています。一方で、ペットは「ここが痛い」と言葉で伝えられないため、表情やしぐさ、歩き方などを細かく観察しながら負担の少ない方法を選ぶ必要があります。また、嫌がることを無理に続けるとストレスにもなるため、楽しみながら取り組めるよう工夫されている点も大きな特徴です。
動物病院のリハビリで行う主なプログラム
動物病院のリハビリでは、ペットの状態や性格、生活環境に合わせてさまざまなメニューを組み合わせていきます。いきなり激しい運動をするのではなく、少しずつ負荷を高めながら「できること」を増やしていくイメージです。ここではよく行われる代表的なプログラムをご紹介します。
関節可動域訓練とストレッチ
手術後やケガのあとは、痛みをかばって動かさない期間が続くことで、関節の動く範囲が狭くなりがちです。そこで、獣医師や動物看護師が脚や関節をやさしく動かし、関節周りの筋肉や靭帯を柔らかく保つ「関節可動域訓練」が行われます。あわせて、硬くなった筋肉をほぐすストレッチも取り入れることで、痛みを和らげつつスムーズな動きを取り戻すことを目指します。
筋力トレーニングとバランス運動
立ち上がりにくい、すぐに座り込んでしまうといった症状がある場合は、筋力低下が進んでいることも多いです。動物病院のリハビリでは、段差をゆっくり上り下りする、低めの障害物をまたいで歩く、バランスボールやクッションの上に前足や後ろ足を乗せるなどの運動を行うことがあります。これらは遊びの延長のように見えますが、しっかりと筋肉やバランス感覚を鍛える効果があり、転倒予防にもつながります。
水中トレッドミルや歩行訓練
関節や腰への負担を減らしながら運動量を増やしたい場合には、水中トレッドミル(ウォーキングマシン)を使ったリハビリが選ばれることもあります。水の浮力によって体重が軽くなるため、痛みがある子でも比較的楽に歩きやすくなるのが特徴です。また、リードをつけてゆっくり歩く「歩行訓練」も、正しい足の運び方を覚え直すのに役立ちます。歩くスピードや距離、休憩のタイミングなどは、ペットの体力に合わせて細かく調整されます。
リハビリを始める前に知っておきたいこと
「うちの子にもリハビリが良さそう」と感じても、自己判断で運動量を増やしてしまうのは危険です。リハビリはあくまで医療の一部であり、ペットの状態によってやってはいけない動きや注意点も存在します。安全に効果を出すために、始める前に知っておきたいポイントを押さえておきましょう。
まずは獣医師による診察と検査から
リハビリを検討するときは、まずかかりつけの動物病院で診察を受け、現在の病状や痛みの程度、心臓や呼吸器など全身の状態をチェックしてもらいましょう。必要に応じてレントゲンや血液検査などを行い、「どこまで動かしてよいのか」「禁止すべき動きは何か」を明確にします。同じように見える症状でも、原因によって適したリハビリの内容は大きく変わるため、専門家の判断が欠かせません。
リハビリの頻度と期間の目安
リハビリは一度やれば終わりではなく、ある程度の期間継続していくことで効果が現れます。一般的には、動物病院でのリハビリと自宅でのケアを組み合わせ、週に数回のペースで続けていくことが多いです。手術後の回復期なのか、慢性的な関節疾患なのかによっても期間は変わりますので、初回のカウンセリング時に「どれくらいのペースで通うと良いか」「目標とする状態はどこか」を獣医師と共有しておきましょう。
費用の考え方とペット保険
リハビリには時間と手間がかかるため、どうしても一定の費用が発生します。通院の回数が増えるほど負担も増えるため、あらかじめ料金体系を確認し、家計とのバランスを考えることが大切です。加入しているペット保険によっては、リハビリや物理療法が補償対象になる場合もあります。保険証や約款を持参して動物病院で相談すれば、「どこまで保険が使えるか」を一緒に確認してもらうこともできます。
自宅ケアと動物病院リハビリの上手な組み合わせ方
動物病院でのリハビリは、専門的で安心感がありますが、通院だけで全てをまかなうのは現実的に難しいこともあります。そこで重要になるのが、日常生活の中でできる「ホームケア」です。病院で習った内容を自宅でも少しずつ続けていくことで、効果を長持ちさせ、ペットの体力維持にもつながります。
おうちでできる簡単エクササイズ
自宅でのリハビリは、難しいことをする必要はありません。たとえば、ゆっくりとした散歩の距離を少しずつ伸ばす、部屋の中にタオルやクッションを置いて障害物歩行をする、座った姿勢から立ち上がる動作を数回くり返す、など簡単なものでも十分効果があります。大切なのは、ペットが楽しそうに取り組めることと、決めた回数を無理なく続けられることです。
無理をさせないためのチェックポイント
リハビリや運動を行ったあとは、次のようなサインがないか確認してあげましょう。
・運動後に強く痛がる、鳴く、触られるのを嫌がる
・翌日になっても歩き方がおかしい、びっこを引いている
・呼吸が荒い、ぐったりして元気がない
こうした様子が見られる場合は、負荷が強すぎたり、そのメニューが体に合っていない可能性があります。無理に続けず、いったん中止して動物病院に相談してください。少しずつ負荷を調整しながら、「ちょうど良いレベル」を探していくことが大切です。
かかりつけ動物病院とのコミュニケーション
リハビリを長く続けるためには、獣医師やスタッフとのコミュニケーションも欠かせません。自宅での様子や気になった変化、うまくできなかったメニューなどは、次の通院時にメモを見せながら相談するとスムーズです。動物病院側も、実際の生活環境や飼い主さんの負担感をふまえてメニューを調整してくれます。無理なく続けられる形でリハビリを取り入れることで、ペットの表情や動きにも少しずつ変化が現れてくるはずです。焦らず、ペットのペースに寄り添いながら、一緒に「できること」を増やしていきましょう。